歌劇「ローエングリン」(初演1850年ワイマール宮廷劇場)

[主な登場人物]
ローエングリン・・・聖杯守護の白鳥の騎士
エリーザベト・・・ブラバンド公国の公女
テルラムント・・・ブラバンドの領主の座を狙う伯爵
オルトルート・・・夫をあやつり、謀略を企てる魔女
ハインリッヒ・・・ドイツ国王
(第1幕)
ドイツ国王ハインリッヒが東方遠征の募兵のためにブラバンド公国を訪れた。そこでハインリッヒ王はブラバンド公国の内紛のうわさを耳にし、テルラムント伯爵を召喚する。
テルラムントによると公国の世継ぎゴットフリートが現在行方不明になっているのは、前大公の息女エルザが男と密通して支配権を乗っ取ろうとし、ゴットフリートを殺害したからであるとのことだった。
国王はエルザも召喚することにし、エルザが裁きの場に連れられてくる。ところがエルザは放心状態で弁明をしない。一同が様子をうかがうなか、エルザは不意に彼女の夢に現われた騎士について語りはじめ、自分を救ってくれるのはその騎士であると告げる。
ついに裁判は神明裁判により決闘によって有罪無罪を決めることになったが、エルザは夢に見た騎士を自分の代理の騎士とするという。そこで伝令使がこの騎士を呼び出すが、騎士は来ない。エルザは国王にもう一度だけ呼び出してくれるよう強く要請し、再度伝令使が騎士を呼び出す。
人々は固唾を飲んで見守るが、沈黙のままで来る気配はない。緊張が高まっていくなかエルザはひざまずくと熱烈に神に祈りをささげる。すると遠くから何かが近づく。人々が騒然とするなか次第に近づいてきたのはなんと白鳥の曳く小舟にのった騎士であった。人々の大歓声のなか白鳥の騎士はついに陸に降り立つ。
神々しいまでの姿で白鳥に別れを告げた騎士は王に挨拶し、エルザに近づく。白鳥の騎士はエルザの夫となり領地を守ることを誓うが、決して破ってはならない約束をエルザに課す。それは自分の氏素性を決して尋ねてはならないというものだった。非常に激しい口調で念を押す白鳥の騎士に夢見心地のエルザはそのことを約束する。
いよいよ神明裁判が始まる。白鳥の騎士は一撃のもとにテルラムントを倒すが、命だけは助けてやる。群集の歓声がこだまするなかエルザと白鳥の騎士は喜びに浸る。
(2幕)
アントワープの城内。白鳥の騎士との裁判に敗れたテルラムントは妻オルトルートの嘘に自らが騙されてしまったのだと言い、オルトルートを責める。しかしオルトルートはあの裁判はでっちあげで騎士が魔法を使ってごまかしたのだとテルラムントを納得させる。そしてエルザに白鳥の騎士の身元を問うように仕向ければ、白鳥の騎士の魔力は消えてしまいテルラムントが勝つのだと言う。オルトルートとテルラムントはエルザへの復讐を誓う。
やがて城のバルコニーにエルザが現われる。それを外からひそかに見ているテルラムントとオルトルート。オルトルートはエルザの前に姿を現し、裁判で敗れた夫を持つ自分の哀れみを訴える。同情したエルザはオルトルートを城のなかへ招き入れる。ここでオルトルートはエルザにお礼だと言って白鳥の騎士の素性に対する疑問を流し込み、自分の魔術でそれを明かすことができると誘惑してみる。しかしエルザは白鳥の騎士に対する信頼を口にし、その申し出を拒否する。
夜があけエルザと白鳥の騎士の婚礼当日。礼拝堂へ向かうエルザの一行だったが、そのなかから突如オルトルートが態度を変えてエルザの前に立ちはだかり「氏素性の知れぬ騎士は魔法を使ったのだ。」と民衆の前でののしる。
必死に反論するエルザと民衆の騒ぎが大きくなったところで国王ハインリッヒと白鳥の騎士が現われる。事の状況をエルザより聞いた白鳥の騎士はオルトルートにその場を立ち去るよう詰め寄り、エルザをなぐさめる。
再度一行が礼拝堂へ向かおうとしたその時、今度はこれまで身を潜めていたテルラムントが前に立ちはだかり、白鳥の騎士の氏素性をあかすように迫る。白鳥の騎士は「エルザを除いてはその答えを要求する権利はない。」と言ってこれを退け、エルザの様子をうかがう。不安に打ち震えるエルザ。しかしエルザは必死で気持ちを立て直し、改めて約束を誓う。白鳥の騎士はエルザの手をとって礼拝堂へ向かう。しかしエルザがふと振り返ると、そこには勝利を確信するかのように腕を突き上げるオルトルートの姿があった。
(3幕)
婚礼が終わり白鳥の騎士とエルザは寝室に導かれ、はじめて二人きりになる。エルザははじめは喜びを表すものの二人の時だけでも名前を呼び合えるよう、素性をあかしてほしいと白鳥の騎士に次第に強く迫ってくる。ヒステリックになったエルザは、この騎士がいつかは白鳥に乗って帰ってしまうのではないかという幻想に捉われるようになり、ついに白鳥の騎士にその名を尋ねてしまう。そこにテルラムントの一味が寝室に乱入。白鳥の騎士は一刀のもとに彼を斬り捨てる。
名が問われてしまった以上、もはや答えないわけにはいかない。別れが決定的となり絶望するエルザ。白鳥の騎士はエルザに公の場で自らの名をあかすことを誓う。
翌日、東方への出陣を控えた兵士たちが集合し、彼らを率いる白鳥の騎士を歓迎する。しかし白鳥の騎士からの口からは東方遠征には行かれなくなったという言葉が発せられ、さらにエルザが自分の名を尋ねたことを告発する。一同騒然とするなか、白鳥の騎士は超然として自らの素性を語る。
人々が近づき得ぬはるか遠い場所に聖杯城モンサルヴァートがあり、彼はそこで聖杯(グラール)の霊験を受けた聖杯騎士であることが語られる。そしてついに彼の名があかされる。彼の父は聖杯城主パルツィヴァールで彼はその息子ローエングリンであった。
陶然とする人々と茫然自失のエルザ。そんななかローエングリンは来るべきドイツの勝利を予告する。そこへついに聖杯城から白鳥が迎えにやってくる。
エルザに今生の別れを告げたローエングリン。だがそこへオルトルートが立ちはだかり、これまでの彼女の企みを全てあかす。ゴットフリートはエルザが殺したのではなく、領主権を乗っ取ろうとしたオルトルートが魔法で白鳥の姿に変えさせてしまっていたのだ。オルトルートは勝ち誇った表情でローエングリンを嘲笑する。
しかしローエングリンは泰然自若として白鳥のもとへ行き、白鳥の首にかかった鎖を外してやる。すると、オルトルートが白鳥にかけていた魔法は解け、白鳥はゴットフリートの姿に戻る。ローエングリンはゴットフリートをブラバンドの新領主として皆に引きわたし、静かに去っていく。エルザは悲しみのあまりゴットフリートの腕の中で息絶える。
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