舞台祝祭劇「ニーベルングの指環」〜序夜
楽劇「ラインの黄金」
(初演1869年バイエルン宮廷歌劇場)

ラインの黄金 ニーベルングの指環[主な登場人物]
  ウォータン・・・隻眼の主神
  フリッカ・・・ウォータンの正妻。結婚の女神
  フライア・・・フリッカの妹。美の女神
  ローゲ・・・火の神(半神)
  エルダ・・・智の女神
  アルベリヒ・・・ニーベルング族の小人
  ミーメ・・・ニーベルング族でアルベリヒの弟
  ファゾルト・・・巨人族
                                                           ファフナー・・・巨人族でファゾルトの弟

                                                                       ※ニーベルングの指環4部作全体の人物関係図はこちらへ

(第一場)
 地底に住むニーベルング族のアルベリヒはライン河底に入り込み、3人のラインの乙女に言い寄るが、姿が醜いため相手にされない。そこへ河底のラインの黄金が姿を現す。乙女たちが崇めるようにその黄金を見るので、アルベリヒはその黄金をけなす。その言葉を聞いた3人の乙女は不用意にもその黄金の不思議な力を洩らしてしまう。その黄金で指環を作り、それを所有するものは無限の権力を与えられるが、ただし愛を断念したものだけが指環を作ることができるのだった。

 先程まで乙女たちを追いかけまわしていたアルベリヒに愛を断念する勇気などないと油断していた乙女たちだが、この秘密を聞いたアルベリヒは愛を呪い、黄金を奪い取ってしまう。悲嘆に暮れる乙女たちをよそにアルベリヒの哄笑がこだまする。



(第二場)
 一方、ライン河畔の山上では主神ウォータンが巨人族たちに作らせた自分の城を見上げて権力に酔っている。そんなウォータンを見て妻のフリッカは激しい調子で詰め寄る。というのも巨人族にこの城を作らせた代わりに、美の女神フライアを彼らに与える契約をウォータンは結んでいるのだった。

 そのフライアを追って巨人族のファゾルトとファフナーがやってくる。二人はウォータンに契約どおりフライアを引き渡すよう要求するが、ウォータンは相手にしない。実はウォータンはフライアを手放すことなど考えてはおらず、狡猾な火の神ローゲを使って抜け道を見出そうとしている。しかしなかなかローゲは現われない。それに対し巨人族の考えは、フライアは神々の生命の源である「黄金のりんご」を栽培しているので、彼女を手にすれば神々の力は落ちるというものだった。

 そこへようやくローゲがやってくる。ローゲは世界のいたるところまで探し歩き、女性の魅力よりももっと価値のあるものを求めたが、容易には見つからなかった。しかし唯一それに勝るものがあったと言ってラインの黄金のことを語り、ニーベルング族のアルベリヒがこれを盗み指環を作ったことを言う。

 巨人族はそれに興味を示し、ラインの黄金が得られるならフライアを断念してもよいと言うが、ウォータンも無限の権力が得られる指環が欲しくなり巨人族の申し出を拒絶する。これを聞いた巨人族は女神フライアを奪い、ラインの黄金をヴォータンが持ってくるまでは人質として預かると言って去っていく。

 神々はフライアの「黄金のりんご」が食べられなくなって生命力を失っていき、フリッカはウォータンの卑劣をなじる。そこでウォータンは意を決して、ローゲを伴いニーベルング族の住むニーベルハイムへ指環を強奪しに出発する。



(第三場)  
 やがて坑道をくぐると地下の国ニーベルハイムに到着する。そこでは指環を手にしたアルベリヒがニーベルング族の王となり暴君として弟のミーメをも隷属させていた。アルベリヒはミーメに隠れ頭巾を作らせてそれを奪い取って呪文を唱える。するとアルベリヒは透明人間となりミーメを鞭打つ。この隠れ頭巾はどんなものにも姿を変えられるという機能もついていた。アルベリヒは権力に酔いしれる。

 狡猾なローゲはアルベリヒをおだてあげ、隠れ頭巾の力を見せてくれないかと言う。アルベリヒは頭巾をかぶり大蛇に変身するとローゲはおおげさに驚き、アルベリヒはますます調子にのる。ローゲは今度は小さなヒキガエルになってほしいと要求すると、アルベリヒはたやすいこととばかりにヒキガエルに変身する。

 その瞬間、待ってましたとばかりにヒキガエルになったアルベリヒを捕らえるようにローゲがウォータンに指示を出し、アルベリヒはいとも簡単に捕らえられてしまう。ローゲとウォータンはアルベリヒを縛り、山上へ戻る。



(第四場)
 再びライン河畔の山上へ戻ったウォータンは、人質のアルベリヒに釈放の代償として財宝を差し出すように要求する。アルベリヒは屈辱を感じながらも指環の力でニーベルング族を呼び出し財宝を運んでくるように命ずる。アルベリヒは財宝を失っても指環さえ持っていれば、また財宝はいくらでも手に入ると考えていたが、ローゲが隠れ頭巾を要求したのに加えウォータンが指環まで要求するので愕然とする。アルベリヒはウォータンをののしり必死に抵抗するが、ウォータンは強引にアルベリヒから指環を奪ってしまう。

 ようやくアルベリヒは縄を解かれ釈放されたが、去り際に指環を所持するものには必ず死がおとずれるであろうと呪いの言葉を吐いていく。しかしウォータンは全く気にせず、ついに奪い取った指環に見とれている。

 やがて神々がウォータンとローゲの帰りを出迎えにやってくる。そこへ巨人族もフライアを連れてやってくる。巨人族はフライアを手放すかわりに彼女が完全に隠れるだけの財宝を積み上げることを要求する。財宝を全部積み上げるとフライアは隠れてしまったが、まだ髪の毛が見えると巨人族は言い張り、仕方なくウォータンは隠れ頭巾をその部分に積み上げる。

 これで完全に隠れてしまったと思われたがファゾルドは財宝を隙間からフライアの眼差しが見えているのに心を乱される。ファフナーはその隙間を指環で埋めることを要求するが、ウォータンはそれを拒絶し、さらにその指環はラインの乙女たちに返してやってほしいというローゲの申し出も聞きいれないので押し問答になっているところへ、智の女神エルダが突然地下より姿を現す。

 運命を知るエルダはウォータンに神々の黄昏が近づいてきていることを伝え、指環を手放すよう警告する。ウォータンはさらに深く知ろうとするが、エルダはそれ以上答えず静かに地底に姿を消す。

 エルダの謎めいた言葉に深く考えさせられたウォータンはついに指環を手放すことを決意し、フライアは解放される。するとその直後、巨人族のファゾルトとファフナーは財宝や指環の取り分をめぐって言い争いとなり、最後にはファフナーが兄のファゾルトを殺害し、財宝や指環を奪って森の中へと消えていく。

 指環の持ち主には死がおとずれるというアルベリヒの呪いは早くも現実のものとなったのだ。これを見たウォータンは先程のエルダの警告と相まって言い知れぬ不安を感じる。

 陰鬱な空気を払うため雷神ドンナーが岩山へ登り雷鳴をおこし、幸福の神フローが虹の架け橋を出来上がった城へ渡す。ウォータンはその城を「ワルハラ」と名付けた。

 その脇でローゲは神々の没落を見透かし、やがて炎となって彼らを焼き尽くしてしまおうと独白する。谷底からはラインの乙女たちの「上の世界では虚偽と卑怯があるばかり」との嘆きが聞こえるなか、神々たちはワルハラ城へと入場していく。

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