
[主な登場人物]
ジークフリート・・・ジークムントの遺児
ブリュンヒルデ・・・元ワルキューレ
さすらい人・・・隻眼の老人。実はウォータン
ミーメ・・・ニーベルング族アルベリヒの弟
ファフナー・・・巨人族。大蛇になって指環を守る
※ニーベルングの指環4部作全体の人物関係図はこちらへ
(第一幕)
深い森の中。ジークリンデはジークフリートを産んだが、その直後に亡くなってしまった。みなし児ジークフリートはニーベルング族アルベリヒの弟ミーメに育てられて成長した。ジークフリートは両親のことは一切知らない。ミーメは、森の中で大蛇に変身して指環を守っている巨人ファフナーから指環を奪還することを企み、それをジークフリートにやらせようとしている。そのための武器としてジークリンデが持っていたジークムントの形見である霊剣ノートゥングの破片をつなぎ合わせて再び剣を鋳直そうとするが、どうしてもうまくいかない。
そこへジークフリートが森から帰ってくる。ミーメに剣はできたかと聞き、ミーメが作った普通の剣を手に取るが全て簡単にへし折ってしまう。ジークフリートは水に映る自分の顔がミーメと全く似ていないことに気づき、ミーメが父親であることを疑う。ミーメは自分が父親であり母親でもあるという、いい加減な返事をするがジークフリートはそれがウソであることをすぐに見抜き乱暴に迫ってくるので、ミーメは自分が父親ではないこと、母親は出産直後に死んだこと、剣ノートゥングの破片が父親の形見として残っていることを打ち明ける。ジークフリートはそれを知り、ノートゥングの破片を鋳直すことをミーメに命令して再び森へ出かけてしまう。
一人悩んでいるミーメのところに突然、隻眼の見知らぬ男が訪ねてくる。男は自ら「さすらい人」と名乗り、ここでひとやすみさせてほしいと言う。その図々しい態度にミーメはさすらい人を追い払おうとするが彼は居座り、ひと休みさせてくれたお礼に知りたいことを教えてやるから首を賭けて知恵比べをしようと言い出す。随分無茶苦茶な論理の要求だが、ミーメは早いところ厄介払いしたいためこの申し出を受けてしまう。
ミーメは地下に住む種族、地上に住む種族、天上に住む種族は何かという3つの質問をするが、さすらい人は全て答える。しかし天上に住む種族について答えている時に、さすらい人が手に持った槍で大地を突くと雷鳴がとどろくので、ミーメはさすらい人の正体が主神ウォータンであることに気づく。
次はさすらい人がミーメに尋ねる番だ。ジークムントとジークリンデについての2つの質問には軽々と答えたミーメだったが、最後の質問に慌てふためく。その質問とはジークムントの形見ノートゥングは誰が鋳直すのかというものだった。
ウォータンはミーメに「お前は自分が本当に知りたいことを質問しなかった。」と言い、「怖れを知らぬ者だけがノートゥングを鍛え上げることができる。」と告げる。
本当ならミーメの首はウォータンによって奪われるところだが、ウォータンはミーメの首を「怖れを知らぬ者」の手に預けると言って去っていく。
そこへ再びジークフリートが帰ってくる。「怖れを知らぬ者」とはまさしくジークフリートだと直感したミーメは自分の首が奪われることを怖れ、ジークフリートに怖れを覚えさせようとするが彼は一向に理解しない。そこでミーメはいずれジークフリートに倒させようと思っていた大蛇ファフナーの眠る洞窟へ彼を連れて行き「怖れ」を教えようと考える。そのためには武器が必要だがジークフリートに合う武器はもはやノートゥングしかない。しかしミーメにはそれを鋳直すことはどうしても無理なので、苛立ったジークフリートが鋳直しはじめる。
ジークフリートはミーメがやっていた方法とは全く違うやり方で剣を鍛えていく。最初はそんなやり方ではできるはずがないと見ていたミーメも次第にジークフリートは剣を作り上げると確信する。それどころかジークフリートは大蛇ファフナーのところへ行っても怖れを覚えることなく、大蛇を打ち倒すのではないかと直感する。
さすらい人の言葉からすれば、ジークフリートが怖れを覚えないとするとミーメの首はジークフリートによって奪われるということになるのでミーメは思案する。考えたすえにミーメはジークフリートが大蛇を倒したあと、飲み物だと偽って毒を飲ませ殺すことにする。そうすれば指環もミーメのものになるとふんだのだ。
ミーメがこのように考えている間に、ついにノートゥングはジークフリートの手によって鋳直された。さすらい人の予言は当たったのである。ジークフリートはノートゥングを鍛え直したことに喜びの声をあげ、ミーメも自分の思惑が実現にむけて一歩近づいたことに対し喜びの叫び声をあげる。
(第二幕)
大蛇ファフナーの洞窟の入り口の前。ニーベルング族のアルベリヒが身を潜めて、この大蛇から指環を奪おうと機会をうかがっている。そこへさすらい人がやってくる。アルベリヒは彼がウォータンであることを見抜いて、かつて指環を強奪されたことをののしる。しかしさすらい人は全く取り合わない。そして指環を狙っているライバルはジークフリートを伴ってくるミーメだけであることをアルベリヒに伝え、洞窟で眠っている大蛇のファフナーにもそのことを伝える。しかしファフナーは全く意に介さず眠り続ける。
そこへミーメとジークフリートがやってくる。ミーメがジークフリートに大蛇のことを教えるが、それをうるさく思うジークフリートはミーメを追い払う。
ジークフリートはそこでひとり物思いにふける。自分の知らない父と母のことを想像し、とりわけ母に対する憧れを抱く。ふと気がつくと小鳥たちが楽しげにさえずっている。ジークフリートは小鳥たちと会話したいと思い、葦の笛で小鳥の声を真似る。しかしうまくできない。それならばと今度は自分の得意な角笛を目一杯に吹く。
そうするうちに洞窟から何かが動き出す。眠っていた大蛇のファフナーが目を覚ましたのだ。眠りを覚まされ不機嫌なファフナーはジークフリートに襲いかかるが、全く怖気づかないジークフリートはノートゥングの一撃でファフナーを打ち倒す。
ファフナーは死ぬ間際に「このような恐ろしい行いはお前が考えたことではない。お前は何も知らぬが、このことをさせた奴がお前を殺そうとしている。」と警告し死んでいく。しかしジークフリートはその意味がわからない。
ジークフリートがファフナーから剣ノートゥングを抜き取ると、ファフナーの血が手にかかる。あまりの熱さに手についた血をなめると、不思議なことに今まで聞こえなかった小鳥の会話が聞こえるようになる。小鳥はジークフリートにファフナーが持っていた隠れ頭巾と指環のことを教えたので、ジークフリートは洞窟に入りそれらを持ってくる。
アルベリヒとミーメはそれを脇で見ており、お互いに指環を獲得しようと言い争う。小鳥はジークフリートにミーメを警戒するようにアドバイスする。
ミーメがジークフリートに近づき、労をねぎらうふりをして毒の入った飲み物を飲ませようとするが、ミーメの悪巧みはことごとくジークフリートに見透かされ、ミーメはジークフリートに一刀のもと倒される。遠くではアルベリヒの高笑いが聞こえる。
森の小鳥のさえずりはなおも続き、炎に包まれて岩山に眠る女性ブリュンヒルデのことをジークフリートに語る。小鳥に導かれるままジークフリートはブリュンヒルデの眠る岩山を目指す。
(第三幕)
さすらい人の姿をしたウォータンが智の女神エルダを呼び出す。ウォータンはエルダにかつて聞いた神々の運命を再度問いただす。しかしエルダはウォータンがブリュンヒルデに対して行なった処罰をはじめとした数々の矛盾した行為に、神々の黄昏は避けられぬ運命にあることを告げる。しかしウォータンはそれを受け入れずジークフリートへの期待を口にして、エルダを再び眠りにつかせる。
そこへ小鳥の案内でジークフリートがやってくる。小鳥はさすらい人を見ると飛んでいってしまう。ジークフリートはさすらい人に道を尋ねるが、初めて自分の孫と対話するうれしさで、さすらい人は色々とジークフリートに質問をする。相手が自分の祖父とは知らないジークフリートは早く道を教えるように迫り、次第に苛立ちを覚えてくる。
ジークフリートが不遜な態度をとりはじめるにしたがって、さすらい人も次第に不機嫌になってくる。ついに本気になってジークフリートの行く道を阻み、槍を突き出すさすらい人を父親の仇であると誤解したジークフリートは、ノートゥングでその槍を真っ二つに折ってしまう。
かつてウォータンの槍で砕かれたノートゥングはジークフリートの手で鋳直され、今度はその槍をノートゥングが折ったのである。
ついに神々よりも強いものが現われたことを悟ったさすらい人は寂しさと同時に内心満足しながら静かに去っていく。ジークフリートはそのことには気も留めず、角笛を吹きながらブリュンヒルデの周りを囲む炎へと入っていく。
炎を抜けると清々しい岩山がそこにあった。非常に静かな澄み切った空気のなかジークフリートは一頭の馬と、盾と鎧に覆われたブリュンヒルデを発見する。ジークフリートはブリュンヒルデに近づき兜と鎧を取り去る。
その瞬間、ジークフリートは仰天して飛び上がる。彼は初めて女性を目にしたのだ。ジークフリートはこのとき初めて怖れという感覚を知る。
しかし、どうやってこの女性を目覚ませるか考えたジークフリートは、高らかに「目を覚ませ!」と叫ぶと勇気をもってブリュンヒルデの唇にくちづけをする。
しばらく緊迫した沈黙が流れたあと、ブリュンヒルデはゆっくりと晴れやかに目を覚ます。まず太陽の光に祝福を与えたブリュンヒルデは、炎を乗り越えてきた目の前の男がジークフリートであることを知り、神々と世界に感謝を捧げる。
かつてジークリンデがブリュンヒルデとの別れ際に予告したジークリンデの感謝の報いがこのようなかたちで実現されたのであった。
しかしブリュンヒルデはふと我に帰り、神性を失ってしまった自分の今を嘆き、ジークフリートの求愛に値しないのではないかと言うが、ジークフリートの情熱は彼女の不安をも打ち砕き、やがてブリュンヒルデはジークフリートの腕の中に飛び込んでいく。
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