舞台祝祭劇「ニーベルングの指環」〜第一夜
楽劇「ワルキューレ」
(初演1870年バイエルン宮廷歌劇場)
ワルキューレ ニーベルングの指環
[主な登場人物]
  ウォータン・・・隻眼の主神、ウェルゼ
  フリッカ・・・ウォータンの正妻。結婚の女神
  ブリュンヒルデ・・・ワルキューレの筆頭格
  ジークムント・・・ウェルズング族の若者
  フンディング・・・ジークムントの敵
  ジークリンデ・・・フンディングの妻
※ニーベルングの指環4部作全体の人物関係図はこちらへ

 主神ウォータンは智の女神エルダの警告以来、神々の将来に不安を感じるようになる。そこでエルダとの間に八人のワルキューレをもうけ、ウォータンの意志に従う女戦士とする。またかねてより奪還したいと気になっていた指環は契約上自ら取り戻すことはできないので、彼はウェルゼと名乗って、人間の女性との間にウェルズング族のジークムントとジークリンデをもうけ、彼らに指環奪還の期待をかけている。

(第一幕)
 激しい嵐のなか、戦いに傷つき追手を逃れてきた若い男が森の一軒家にたどり着くなり倒れてしまう。そこへ、この家に住んでいる若い女が彼を見つける。水を求める男にすぐに水を差し出す彼女は心引かれるものを感じる。

 女のもてなしに体力を回復した男は敵の大軍に追われている身なので、この家に禍いが訪れるのをおそれて去ろうとする。しかし女はこの家にはすでに禍いが住んでいるので、ここに留まるように乞う。その様子にただならぬ気配を感じた男はそこへ留まることにする。

 そこへ女の夫フンディングが帰ってくる。フンディングはその男と女の目つきが似ていることをいぶかしく思うが、その男にこれまでの身の上を話すよう求める。男は敵との戦いのなかで父を見失い、母は殺され妹も行方不明になったことを語る。その話しを聞くうちにフンディングはこの男こそが自分の敵であることを知る。今夜は掟に従って男に宿を提供するが、翌日決闘するように迫り、寝室へ入っていく。

 一人残された男は明日の決闘を前にかつて父ウェルゼが語っていた剣のことを思い出す。それは危急の時に彼にもたらされると約束されていたものであった。まさに今がその時なのだ。男は剣のありかを求めて父の名を叫ぶ。するとその家に茂っていたトネリコの木に一筋の光るものが見える。しかしまだ男はそれが何なのか分からない。

 再び辺りが暗くなると女がこっそりと現われる。二人は不思議な力に引かれて愛し合うようになっていた。彼女は夫のフンディングに眠り薬を飲ませたので今のうちに逃げることをすすめる。さらに彼女はある日おこった出来事について語る。彼女がフンディングとの望まぬ結婚をさせられた日、一人の隻眼の老人が現われ、トネリコの幹に一振りの剣を深く刺して去っていったが、誰もこれを引き抜くことができなかったというのだ。彼女はその隻眼の老人こそ自分の父親であると直感した。そしてその剣を引き抜く人こそ今日出会ったこの男であると確信し、感極まって男の腕に飛び込む。

 二人は愛を語りお互いの身の上を語るが、次第に女はこの男こそ生き別れになっていた双子の兄ではないかと思い始め、男に父の名を尋ねる。

 男が父の名をウェルゼといった瞬間、彼女はこの男が兄であることを確信して、男を初めてジークムントという名で叫び、男も自分がジークムントであることは宣言する。そして彼女に教えてもらったトネリコの木に刺さっている剣に手をかけると、その剣をノートゥングと名付け、その名を叫びながら渾身の力でそれを引き抜くと剣はついにその全貌を現す。

 それを感動的に見上げる女は自分は妹のジークリンデであることを名乗り、二人はフンディングの館から逃亡することを決意する。


(第二幕)
 天上界では地上での事の成り行きを見守っていた主神ウォータンが、ジークムントとフンディングの戦いでジークムントに勝利を得させるため、に娘ワルキューレの一人ブリュンヒルデにジークムントの援助をさせようと考えていた。そこへ妻のフリッカがやってきてウォータンのこれまでの行為をなじる。

 ウォータンが智の女神エルダと通じワルキューレという8人の娘をもうけ、さらに人間の女とも通じてジークムントとジークリンデをもうけたことが妻フリッカにとっては面白くない。フリッカはウォータンがジークムントに勝利を得させようとしていることに不満を示す。

 当初はジークムントは霊剣ノートゥングを自分で見つけ、自分の意志で行動するのだと主張していたウォータンだが、ノートゥングはウォータン自身がトネリコの木に突き刺したもので、しかもウォータンの子であるジークムントはウォータンの意志のまま行動することをフリッカから詰問される。そしてついにウォータンはジークムントの勝利を禁ずる誓いをフリッカにしてしまう。

 フリッカが得意になって去った後、ブリュンヒルデがやってきて父ウォータンの様子がおかしいことに気づく。ウォータンは自らの苦悩を語る。

 ウォータンはラインの黄金で作った指環が巨人族のファフナーのもとにわたってから、さらにエルダから神々の黄昏の警告を受けてから、将来に対し不安を持っていた。しかし自らが契約によって巨人族へ支払った指環を自らが奪うことはできない。そこで人間の女性との間にジークムントをもうけ、彼を神々を救う英雄に育てようと思ったが、その願いは妻フリッカによって禁じられてしまった。ウォータンは絶望し、自らの終末を予告する。そして苦悩のうちにブリュンヒルデにジークムントを倒す指令を出す。ブリュンヒルデもウォータンの娘のため、その意志に従わなければならない。悲しみを隠すように疾風のように姿を消すウォータンに対し、重い足取りでブリュンヒルデはジークムントのもとへ行く。

 そのころ地上ではジークムントとジークリンデが逃走しているところであった。しかし追手のフンディングから逃げられそうにない。ジークムントはジークリンデを引きとめ休もうとする。すると突然ジークリンデは自分が愛なきフンディングと結婚したことを恥じ、幻覚におそわれ気を失ってしまう。ジークムントがジークリンデを介抱していると、そこへブリュンヒルデが突如現われる。

 ジークムントに死の宣告をするためにやってきたブリュンヒルデはジークムントにしか見えない。当初ジークムントは死後は主神ウォータンのもとで暮らし、父ウェルゼ(実際はヴォータンと同一なのだがジークムントは知らない)とも会えるというブリュンヒルデの言葉に耳を傾けていたが、「ジークムントはそこでジークリンデを抱けるのでしょうか。」という問いをブリュンヒルデが否定すると、きっぱりと死後の世界に行くことを拒否する。

 それでも強く説得するブリュンヒルデに対し、ならばいっそ二人で死のうとジークムントはノートゥングをジークリンデに向かって振り上げる。ジークムントのジークリンデに対するこれほどまでの愛情に強い衝撃を受けたブリュンヒルデは、ついにウォータンの意志に背きジークムントを保護し勝利を与えることを約束し、消えていく。

 ブリュンヒルデが去った後、ジークムントは依然として眠ったままのジークリンデの傍らで彼女を気遣っている。しかし突然静寂を破ってフンディングの角笛が聞こえてくる。ジークムントはフンディングとの戦いに挑む。

 ジークムントがフンディングと戦っていると、ブリュンヒルデが現われてジークムントに加勢しようとする。しかしその時、ウォータンが現われ自らの槍でノートゥングを打ち砕き、武器を失ったジークムントはあっけなくフンディングに殺されてしまう。

 ジークリンデはその戦いを幻覚に捉われながら見守っていたが、ジークムントが殺されたことを知ると再び気を失ってしまう。

 ブリュンヒルデは打ち砕かれた剣ノートゥングの破片とジークリンデを抱き、ウォータンから逃亡する。

 自らの子の殺害に手を貸してしまったウォータンはしばし呆然とする。ウォータンは悲しみをこらえながらフンディングに天上のフリッカのところへジークムントを殺したことを報告に行くように命じ、「行け!」の一言で彼を倒す。やがて気を立て直したウォータンはブリュンヒルデが命令に背いたことへの怒りに震え、彼女を追っていく。



(第三幕)
 天上界ではワルキューレたちが天馬を駆って集まってくるが、ブリュンヒルデだけが一人遅れて異常な速さでやってくる。そして馬の背にはもう一人気を失ったジークリンデが乗っている。ブリュンヒルデは自分がウォータンの命に背いたことを説明し、ジークリンデを救うべく逃走に協力してくれるよう懇願する。しかしこの状況のなか意識を取り戻したジークリンデはジークムントを失った今は自分が生きる価値がないので殺してくれと言う。

 これを聞いたブリュンヒルデは突如強い口調でジークリンデに迫り、生きなければならないことを諭す。そして彼女の腹にはジークムントとの愛の結晶である子が宿っていることを告げる。

 それを聞いた瞬間ジークリンデの顔は高まる喜びに輝き、何としてでも自分の子を助けてくださいと懇願する。ブリュンヒルデはその願いを聞き、自分がウォータンの怒りを引き受けている間に東方の森へ逃げるように言う。そしてジークリンデにジークムントの形見としてノートゥングの破片を渡し、その子供がこの剣を再び鍛え上げることを予告し、その子の名を「ジークフリート」と名付ける。

 ジークリンデはブリュンヒルデに感謝し、ブリュンヒルデがいつの日かその感謝の報いを受けることを予告して森の方へ走り去っていく。

 そうしているうちにウォータンが激しい怒りに燃えながらブリュンヒルデの前にやってくる。ワルキューレたちがブリュンヒルデをかばおうとするが、ウォータンは聞き入れずブリュンヒルデ以外のワルキューレを追い払ってしまう。

 ウォータンと二人きりになったブリュンヒルデは、自分がとった行動はウォータンの命令には背くものではあったが、ウォータンが心の底で思っていた意志を実行したのだと言うが、苦悩を内心感じつつもウォータンはそれを認めようとしない。

 ウォータンは内心の苦悩を押し隠し、命令に背いたブリュンヒルデを罰しなければならない。それはブリュンヒルデの神性を剥奪し彼女を眠りにつかせ、その眠りを覚ました人間が彼女をものにするというものだった。ブリュンヒルデは、ウォータンの本来の意志を実行した自分をそのように罰することはウォータン自身をいやしめることになると説得し、もしそのような罰し方をするなら自分を殺してくれるようにと言う。

 そして思い立ったように自分を眠りに閉じ込めるのなら、周りを炎で囲み、それを乗り越えてきたものだけが自分をものにできるようにしてくれるよう強く迫る。娘の命をかけた切願に感動したウォータンはブリュンヒルデを深い眠りにつかせ、その周囲に炎の壁を作って、この炎を越えて彼女を目覚めさせる勇者のみが彼女を妻とすることを許すようにする。

 ウォータンがブリュンヒルデのまぶたに口づけすると、ブリュンヒルデから神性が消え深い眠りにおちる。ウォータンは火の神ローゲを呼び出し、ブリュンヒルデの周りを炎で包み込み、槍を高く上げて「この槍を恐れる者は決してこの炎を踏み越えるな!」と叫び、静かに去っていく。

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